授業科目名 高温反応の熱力学
担当教員 永田和宏
単位数 2-0-0
推奨学期 5

講義のねらい

熱力学は、熱などのエネルギーを使って仕事を効率よく行う方法を示してくれる。水は高所から低所に流れ、途中にダムがあると位置のエネルギー差を利用して羽根車を回し、その機械的エネルギーを発電機で電気に変えている。蒸気タービンは水を蒸気に変えるボイラーと水に凝縮させる復水器との間に生じる圧力差を利用してタービンを回している。製鉄ではコークスを燃焼させて熱と一酸化炭素ガスを生成し、その熱と還元ガスの一部で鉄鉱石を鉄や銑鉄に変えている。このようにエネルギーの高い状態から低い状態へ熱が流れる時、その一部は機械的エネルギーに変換されさらに電気エネルギーになる。あるいは化学的エネルギーに変換され製鉄など化学反応をおこす。材料の製造プロセスはこの原理に従っている。材料はさまざまな環境中で温度変化や風雨に曝されるなどすると次第に劣化し変化する。すなわちエネルギーの流れの中で変化している。その方向は材料がその環境の中で最も安定な状態に変化してゆく。

この講義では、熱力学を使えるようにする。そのために、多くの事例を取り上げると同時に、宿題を課すことによってより深く理解できるようにしている。構造材料や機能材料の製造工程における高温化学反応の熱力学的状態変化を具体的に取り扱えるようにする。質量作用の法則、熱力学第1法則(エネルギー保存則),熱力学第2法則(エントロピー生成),熱力学第3法則(エントロピーの絶対値)、ギブスエネルギーと化学ポテンシャル,溶体論、および状態図の理解と使い方に重点を置く。

講義計画

  1. はじめに、無から有は生じない(質量の保存)
  2. 熱とは何か(熱力学第一法則)
  3. 物質の状態変化とエントロピー生成(熱力学第2法則)
  4. エントロピーの絶対値(熱力学第3法則)
  5. ギブスエネルギー変化と化学反応
  6. 混合気体の状態
  7. 混合気体と固容体の状態
  8. 混合液体のモデル
  9. 不均質系の化学反応
  10. 電池反応
  11. 相律と状態図
  12. 状態図とギブスエネルギー
  13. 2元系状態図
  14. 金属の酸化と還元

授業評価

出席(14回,7点)、レポート(全28問題,42点)、期末試験(51点) レポート:講義ごとに問題を宿題として課す。次の講義時間までに提出すること。レポートの評価はA(1.5点),B(1.0点),C(0.5点)で行う。再提出で評価を上げる事ができる。遅れて提出したレポートは評価が低くなる。

テキストなど

教科書:「解いてわかる材料工学T」永田和宏、加藤雅治著、丸善、平成9年

参考書:"Introduction to the Thermodynamics of Materials",Gaskell,3rd ed. 1995, Taylor & Francis

担当教官から一言

「高温反応の熱力学」課外授業

たたら製鉄は簡単、砂鉄と木炭から鋼を造ってみよう